朝日総合法務事務所｢吉田手記｣

   私は平成３年会社に就職して、３ヶ月後１９才でＵＣ、ＪＣＢカードを作り、カードで物が買える、飲み食い出来ることを覚え、カードの便利さを知りました。
   ローンで車も買いました。
   手取１２，３万円の給料ではカードの支払、車のローンの支払が出来なくなるのは時間の問題でした。
   平成４年の５月にはカードのキャッシングを借りていました。
   カードも１社ずつ増え６社のカードの支払をカードのキャッシングの中でやり繰りしていたのですが、そのうちそれも回らなくなってしまって平成５年６月にはサラ金から借りていました。
   サラ金もまた、１社ずつ増え５社になってしまいました。
   車のローン等１２社で総額５００万円の多重債務になっていた平成８年、マンションを買わないかとの誘い、サラ金の債務を上乗せしてローンが組めるとのことです。
   サラ金に返済しているとは誰にも言えないけど、住宅ローンの支払いなら堂々と言えると思い、すぐ乗ってしまいました。
   その時は年収４５０万円、住宅ローンの支払が月６万円です。
   しかし、上乗せしたローンではサラ金は完済出来ず、２００万円くらいは残ってしまい、そのサラ金の支払も依然として払うことになり、おまけにすぐ転勤になり、給料は変わらなかったけど、マンションは貸して賃料で住宅ローンを支払うことにしたのですが、半年くらいでそのマンションの賃料も入らなくなり、また支払に追われることになってしまいました。
   給料日には大手５社のサラ金へ返済するのに必死でした。
   ある時はＡＴＭへ返済金を挿入した後、出てくるはずのおつりが出てこなくて、次の返済が出来なくて、また１社借入が増えるということもありました。
   私は家族に内緒でしたので、延滞するのが怖くてとうとうヤミ金から借りるようになりました。
   私がヤミ金融から初めてお金を借りたのは、今から約５年前の平成１２年５月頃になります。
   銀行等からのローン、サラ金からの借入があり多重債務の状態になっており毎月の返済も困難な状態でした。
   そのころ、あるスポーツ新聞を見ていたところ、その中にある「ほのぼのプラン」という金融業者が目に入りました。
   東京都知事登録番号等が書いてあったので安心した私は、その新宿にある「ほのぼのプラン」に電話をしてみました。
   すると、氏名・住所・自宅電話番号・携帯電話の電話番号・家族全員の氏名・勤務先・希望融資額等を聞かれ全て答えると一度来店する様に言われました。
   私は、会社に休みをもらい新宿の南口にあるマンションの８階に行きました。
   部屋に入り最初に借入申込書に記入をしました。
   又、従業員の人より現在の他社からの借入れ状況等を詳しく聞かれ「吉田さんは、他社からの借入れが多く、信用がないので最初は、１０日おきの返済になります」と言われました。
   又、「融資は４万円、完済は１０日後に６万６千円、１０日後に完済出来ない場合は、利息のみ２万２千円を入金して下さい。」と言われ４万円を受け取り、マンションを後にしました。
   翌日からは会社に行き仕事をしていましたが、約束の１０日後に完済できず２万２千円を親から借りて持参しました。
   利息を１０日ごとに払い、時には６万６千円の完済をし、又融資を受ける日々が続きましたが、利息分の返済ができなくなると会社に個人名で電話が来て「外から電話しろ！」と言われ「入金出来ないなら新宿にこい！」「親や兄貴に電話するようになるぞ！」などと言われました。
   私は当時高崎に勤務していましたので、「高崎からの電車賃もない状態なんです。」と言うと「会社の人から借りてでも入金しろ！」と言われ、私は、勤務中に家に電話をし、親から何度もお金を借りて振込をしていました。
   この１０日ごとの支払は約半年間平成１２年１２月頃まで続き、ついに私の給与と親からの借入れのお金を合わせても返済できなくなり、銀行やクレジット会社への返済も滞るようになりました。
   「このヤミ金融業者だけがなければ」と思っていましたが、会社や家には、銀行・クレジット会社等より電話が入り、ついには親も気付き自己破産をする様に勧められました。
   このことをヤミ金融業者（ほのぼのプラン）に電話をしたところ「自己破産しても返済はきっちりしてもらうからな！」と言われました。
   このころ会社や家へのヤミ金融業者からの取り立ての電話が毎日のように入り、私は精神的にもおかしくなったせいか、ご飯も食べられなくなり病院に行ったところ胃と十二指腸に潰瘍があり神経的なものからきていると医者にも言われ一ヶ月程病院に通いました。
   今までの事を会社の上司と相談した結果、退職せざるを得なくなりました。
   平成１３年２月５日、十年間勤めた会社を退職し、自己破産の申立てをした頃から家に金融業者からのダイレクトメールが届くようになりました。
   職もなく職業安定所に通う日々が続いていました。
   携帯電話には、どこから調べたのか融資の勧誘がひっきりなしに入っていました。
   失業保険をもらっていましたが、今まで親に借りたお金があるため全て家に入れていました。
   また、生活費と自己破産時の弁護士費用も親から借りていた為、アルバイトしたお金からも返済していました。
   そんな状態なのでお金は喉から手が出る程ほしかったので、又ダイレクトメールの勧誘に負けてしまいました。
   平成１３年３月頃、ダイレクトメールを見て電話をしてみました。
   ダイレクトメールには、「年利２９．２％の金利、自己破産等した方でも大丈夫、３０万円まで貸します」と書いてありました。
   この業者に電話をすると優しい感じの女性が対応してくれましたが新宿まで来るように言われました。
   事務所に行き話を聞くと返済や利息はダイレクトメールに書いてあることとは全く違う条件でした。
   私は借りるのを止めようかと思いましたが、鍵を閉められ断る事の出来ない状態で１０万円弱を借りてしまいました。
   返済は１０日後で完済は145000円、ジャンプ（利息のみ）は45000円と言う条件でした。
   私は、アルバイトで収入は月１０万円程度でしたので、当然１０日ごとの支払いは出来るはずもなく支払日の前日に確認電話で「返せない」と言うと他の業者から借りて返済するように誘導され、又、他社の金融業者よりタイミングよく携帯電話へ「ジャンプ分のお金だけを貸す」という融資の勧誘があり、返済の事で頭がいっぱいの私は「お願いします」と言ってしまいました。
   誰かに相談したくても相談するところを知らない私はノイローゼの状態になって、毎日が返済日になっているので、借入れ件数は当然倍々と増えていきました。
   東京、上野の業者には、約束した利息分のお金が足りず事務所に呼ばれ、行ったところ「出来ないなら全額完済しろ！」と言われ、又、迷惑料も払えと要求され「５５万円を今日一日で作って完済しろ」「親に言って５５万円作れ」等を言われ２時間ほど事務所から外に出られない状態になりました。
   そしてそのヤミ金融の従業員がスポーツ新聞を持って来て「これから５５万円を作りにいく」といい従業員に新宿を連れ回され従業員がスポーツ新聞から選んだ業者に電話をし「出来るだけ多く借りて来い」と言われ、指示された業者に電話をして、事務所に行き一社につき数万円を借りさせられ、この日一日で約１３業者、計５５万円を借入れして従業員に手渡しました。
   当然この時借りた業者の支払も出来ず又他の業者から借りる様になりまたまた倍々に増えて平成１３年４月１６日には、ヤミ金融約５０件になっていました。
   この頃、返済が滞っていた業者からは、電報や電話が家にくるようになっていました。
   電話では、母親に「ぶっ殺すぞ」等の脅迫の言葉を浴びせていました。
   又、この日、親のお金と親戚のお金を借り約４００万円を業者に払い完済させましたが、１５件程は完済出来ず残ってしまいました。
   両親ともにこの頃からヤミ金融から嫌がらせの電話が夜中来ていて眠れない日々を送っていました。
   １５件程のヤミ金融業者へは返済は遅れながらも、私のアルバイトの収入からと親から借りて支払う日々を平成１４年２月上旬まで続きました。
   約１５件を約８ヶ月間、利息のみの支払が総額、約４００万円になっていた為、家族や親族からの借入れも出来なくなってしまいました。
   私は、行く当ても無く、他に相談出来るところもなく、ヤミ金融から逃げる思いで埼玉から宇都宮まで歩いた事もあります。
   それでも家には取り立ての電話や電報は夜中まで来ていました。
   親の説得で家には戻ったもののヤミ金融の催促に絶えきれず「このままだったら死んだ方がまし」と思い、家の工場で首をつり死のうと思いました。
   自殺をはかり意識がなくなりながら親や兄に申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。
   しかし、親がヤミ金融と戦っている事を考えると死に切れませんでした。
   パーキンソン病の父親は、しゃべれない状態でしたが親戚に私の為に頭を下げお金を貸してもらえるようお願いをしてくれました。
   又、親戚からは「おまえの育て方が悪いんだ」とも言われている父を見て自分自身が情けなくなりました。
   父は「これから、少しずつ返せばいい」といいましたが申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
   父は、私がアルバイトから夜中帰って来るまで眠れず起きていた為、風邪や神経が過敏になり病院に通うようになりました。
   そして、母は、業者からの電話を受け「クソばばー」とか「今から家に行くからなー」等脅迫されていましたが、今思えば一番毅然としていたのは母でした。
   しかし、母もこのころ、血圧が高くなり倒れ病院に通うようになりました。
   兄と義理の兄には金銭面で迷惑を掛けてしまい、現在でも両者は、私がヤミ金融に支払う為に出したお金の為に、財政的に生活の回復が出来ず苦労を掛けてしまっています。
   両親も財産はゼロに近い状況で回復は全く出来ていません。
   安易にクレジットを組み、クレジットの返済にカードのキャッシング、そしてその返済にサラ金、そしてまたその返済にヤミ金と違法な利息と知らずに、借りたものは返さなければと必死で金策に走ってきた私の人生は、何だったのだろうと思います。
   考えの甘さからきたことは確かで、反省すべきことは数多くあります。
   しかし、テレビのコマーシャルまでやっている貸金業者がまさか違法な金利をとっているとは思ってもみませんでした。
   本人の返済能力を調査しないで簡単にクレジットが組める仕組み、また簡単に借入ができる仕組みは若者を金銭的に麻痺させます。
   私も麻痺させられていました。
   私は今大いに反省しながら、この経験を生かして相談員として、また事務局の専従者として、「夜明けの会」へ通っています。
   自転車で４０分かかります。
   「夜明けの会」は「月・水・金」は初めての相談者、また「火・木」は継続の相談者と毎日５，６人、時には１０人を超える相談者でごった返しです。
   相談者は一向に減りません。
   中には、精神的にもおかしくなっている人もいます。
   この精神的におかしくなっている相談者がますます増えています。
   このように金銭的に麻痺させる、また精神的におかしくさせる高金利の貸金業者を許せません。
   高金利のない社会にしなければなりません。
   そのため、高金利引き下げの運動に参加します。
   また、私は、山口組五菱会「ヤミ金の帝王、梶山進」に対する、民事裁判の原告の一人でもあります。
   原告になるにはためらいもありましたが、多くの弁護士・司法書士の先生方の支えで勇気をもって参加することにしました。
   この裁判も最後まで戦います。